オールタイム・ベスト 1~25

k.onoderaが今までに鑑賞した全ての映画作品から、優れたものを選んだランキングです。
創作物に対し、このように順位を設定して優劣をつけてしまうというというのは乱暴な行為です。あくまで私個人の評価基準による趣向が反映したものととらえてください。またこのランキングは、私自身にとっても絶対的なものでなく、日々変化していくことをご了承ください。

このページでは紹介作品を、随時更新していきます。
※ランキングは、下位のものから並べています。


25.『魔女』 HAXAN (1922 デンマーク・スウェーデン) ベンヤミン・クリステンセン

魔女についての悪魔的映画。実際に悪魔も出てきます。
気の触れた修道女達の狂態、醜悪なサバトの宴、飛行する魔女と、魔女映画の決定版にして至高の芸術作品のひとつ。
異常なまでに美しく真実味のある表現力に圧倒されます。


24.『眠れる森の美女』 Sleeping Beauty (1959 米) クライド・ジェロニミ

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ディズニー映画の中で最も豪華で最も美しい美術作品です。
にも関わらず、オーソドックスな王子と姫が結ばれる勧善懲悪な物語とはちょっと違い、焦点を三人の「善き魔女」たちのコメディ・チックなドラマに合わせていて、大作でありながらある種の「軽さ」をも獲得していて、作品の価値をさらに高めていると思います。


23.『サイコ』 Psycho (1960 米) アルフレッド・ヒッチコック

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ヒッチコック監督のエポックなクライム・サスペンス。
精神異常にフォーカスを当て、前半と後半で主人公を分けるというトリッキーな脚本を、ひどくモダンな演出で見せる、挑戦的な快作です。


22.『春琴物語』 (1954 日) 伊藤大輔

谷崎潤一郎の原作を、愛らしく、また残酷に演出しています。瞳と針の描写が、心に突き刺さるおそろしい映画。


21.『皇帝の鶯』 CISARUV SLAVIK (1948 チェコ) イジー・トルンカ

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世界最大のアニメーション作家による宝石のような映画です。めくるめく伽藍の世界。
皇帝のエピソードが、選ばれし者の恍惚と不安、孤独を浮き彫りにしていきます。

 


20.『TOKYO EYES』 (1998 仏・日) ジャン=ピエール・リモザン

即興的でありながら、下北沢など、当時の東京の街を最も美しく切り取った映画です。映画における「美」とは、静止画的なものでなく、時間の進行のきらめきであることを再認識させられます。
ヌーヴェル・ヴァーグ的なアプローチが非常に成功した奇跡の一作。

 


19.『ラストデイズ』 Last Days (2005 米) ガス・ヴァン・サント

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自殺したミュージシャン、カート・コバーンをモデルに、「死ぬ前の数日はどうだったのかな?」と勝手に妄想した映画。
女性ものの下着をつけた主人公が、何故かBoyz II Menのミュージック・ヴィデオを眺めたりと、謎めいた描写が多く魅惑的です。
『ジェリー』、『エレファント』と、アーティスティックで鬼気迫る作品を続けて撮っていたガス・ヴァン・サント監督が、行くところまで行ってしまった、死と絶望のにおいが濃密に漂い、また死による救いも描かれる、極北の作品です。


18.『ヒズ・ガール・フライデー』 His Girl Friday (1940 米) ハワード・ホークス

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ロマンティック・コメディが得意なハワード・ホークス作品の中でも、マシンガンのようにセリフが高速で飛び交い、奇蹟としか言いようが無いグルーヴの嵐が次々に巻き起こる、抱腹絶倒を超えて神々しくすらある一本です。


17.『山椒大夫』 (1954 日) 溝口健二

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原作に負う部分が大きい作品ですが、それだけに古典の映像化作品として最大限の神経が払われ、溝口健二の美学と残酷なエモーショナル表現が、古典的な美と出会い、さらに高みに上ることで、畏怖すべき神仙の域に達したものになっています。


16.『詩人の血』 Le Sang d’un poète (1930 仏) ジャン・コクトー

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ド・ノアイユ子爵の出資により、ルイス・ブニュエルとジャン・ルノワールが撮った映画が『黄金時代』と『詩人の血』でした。才能のある作家ふたりが本領を発揮し、好きなものを好きなように撮ったので、信じがたいほどの傑作が出来上がりました。

ガキ大将の作った凶器の雪玉で死に瀕する少年。彼の命運は、少年の頭上に現れた天使たちの、生と死を司るカードゲームにゆだねられる…。
デヴィッド・リンチの「ツイン・ピークス」などにも大きな影響を与えているのではと思います。
20年代前後には、このような芸術を目指す映画が、現在よりも多く見られました。この後、時代は、演劇的な方向に映画を走らせていくことになります。

 


15.『サンセット大通り』 Sunset Blvd. (1950 米) ビリー・ワイルダー

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確執のあったグロリア・スワンソンとエリッヒ・フォン・シュトロハイムに加え、バスター・キートンやセシル・B・デミルなどを出演させたことによって、かつてのハリウッド・バビロンの亡霊が蘇り、監督・ビリー・ワイルダーの才覚すら大きく超えてしまったおそろしい傑作です。


14.『フェリーニのローマ』 Fellini Roma (1972 伊) フェデリコ・フェリーニ

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フェリーニの視点から、都市ローマの今昔をオムニバス形式で描いていきます。

屈強な娼婦たちが集うおそろしい売春宿、うら寂しい場末の小劇場、禍々しい教会ファッションショーなど、観る者を戸惑わせつつ魅了していきます。


13.『ブンミおじさんの森』 ลุงบุญมีระลึกชาติ (2010 タイ・他) アピチャッポン・ウィーラセタクン

メディア・アートの視点から、映画全体を変革させてしまう予兆を感じさせる、真の芸術映画。
有名な俳優を使用せず、映画史的価値観を凌駕する普遍的演出の力のみで、全てを見せきります。


12.『カスパー・ハウザーの謎』
Jeder fur sich und Gott gegen Alle (1975 独) ヴェルナー・ヘルツォーク

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幽閉された謎の孤児カスパー・ハウザーは、社会と全く触れないまま成長し、しかし突然社会の中に放り出されます。
常識的でない代わりに、彼には同時に誰もが考え付かない発想と、また穢れの無い眼を持っています。
つまり彼の存在そのものが優れたカメラであり、彼の見る風景は、何よりも美しい「映画」となります。


11.『やぶにらみの暴君』 La Bergère et le Ramoneur (1953 仏) ポール・グリモー

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豪華な伽藍のような、規格外のアート・アニメーション。
現在容易に入手出来る『王と鳥』は、この出来に納得できなかった監督自身がリメイクしたものですが、本作における躍動感やユーモアなどは幾分弱まっています。

 


10.『奇跡』 Ordet (1954 ベルギー・デンマーク) カール・テオドア・ドライヤー

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教会の信心を超え、あたかも映画が神の秘蹟であろうとするような、冒涜的なまでに崇高で、でたらめな作品。
観客は、このいかがわしさに戦慄しながらも、現実の出来事であるかのようにただ見守るしかありません。


09.『処女』 À ma soeur! (2001 仏) カトリーヌ・ブレイヤ

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ブレイヤ監督の勇敢な姿勢。全ての女性、人間の、強さへの凱歌。ショッキングな映画です。
ブレイヤ監督は、小説家としてブレイクした頃から、「ショッキング」、「エロティック」さを求められ、そのような作家だというように思われていますが、実際にははるかに普遍的で、信奉する映画監督のひとりです。

 


08.『ツイン・ピークス/ローラ・パーマー最期の7日間』
Twin Peaks: Fire Walk with Me (1992 米) デヴィッド・リンチ

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デヴィッド・リンチ演出が最高の冴えを見せた、聖女受難映画の頂点にして最強のガールズ・ムーヴィーです。


07.『楽しいサーカス』 Vesely cirkus (1951 チェコ) イジー・トルンカ

楽しさとおそろしさと両方持っている。サーカスを抽象芸術として再構築した奇跡のような作品。
フェリーニの描いたサーカスより美しく、セシル・B・デミルの描いたサーカスよりはるかに鋭く描かれた作品です。

 


06.『フェリーニのカサノバ』 Casanova Di Federico Fellini (1976 伊) フェデリコ・フェリーニ

フェリーニ芸術が最高に研ぎ澄まされた極点。絢爛かつグロテスクな肉欲の饗宴の果てにある静寂の美に感動させられます。


05.『おとうと』 (1960 日) 市川崑

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これほど美しい映画が撮られることはもう無いかもしれません。
フィンチャーの『セブン』にも利用された、「銀残し」(フィルムをブリーチして独特の発色にする)は、本作において、大映の宮川一夫が実験的に行った手法です。
あひるの集団の上を岸恵子がひらりと飛び越えるとき、静謐な画面がにわかに、ひかり輝きます。


04.『ビフォア・サンセット』 Before Sunset (2004 米) リチャード・リンクレイター

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リンクレイターが『ウェイキング・ライフ』で言及していた「聖なる時間」を思い出してください。
映画とは何か。それは記録であり、時間をフィルムの上で永遠のものとする行為です。この映画では、それを究極的なかたちで表現しています。
リュミエールが生んだ映画芸術は、静止画、そしてその延長にある連続写真の「死の美」を拾い上げるのに長らく至りませんでした。ここに迫ろうとしたのは、『スターダスト・メモリー』のW.アレンであり、『サブウェイ123 激突』のT.スコットであり、そして最も近づいたといえる『ビフォア・サンセット』のR.リンクレイターでした。
「映画が映画である」ことに、最も自覚的な映画だといえるでしょう。


03.『イワン雷帝・第2部』
ИВАН ГРОЗНЫЙ(2-Я СЕРИЯ) (1946 露) セルゲイ・エイゼンシュテイン

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ロシア表現主義の第一人者、エイゼンシュテインのたどり着いた芸術の極地。
『全線』で見せた、完璧で至高の表現主義的構図の美はさらに先鋭になり、その鬼気迫る映像美は戦慄を覚える程です。
また、当時の権力者スターリンを批判する視点にも心を打たれます。
映画史上最高の「続編映画」。

 


02.『グリード』 Greed (1924 米) エリッヒ・フォン・シュトロハイム

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映画史上最大の悪魔的才能、エリッヒ・フォン・シュトロハイムの代表作。
無免許の歯科医師が、ある女性患者の歯を治療してるうちに劣情を抱いて、そこから結婚までしてしまいます。この冒頭部分から、天才的に不穏であり変態的です。
さらにこの奥さんが、宝くじに当たったことをきっかけにして、おそろしい守銭奴になってしまうのですが、この演技・ヴィジュアルの異様な強烈さに圧倒されます。
様々な地獄を描いた末に、映画は最後に灼熱のデス・バレー(死の谷)に行き着き(酷暑のためスタッフに死人が出ている)、そこで意外にも、信じられないほど美しいラストを迎えます。
これだけでもものすごい傑作ですが、元は9時間超えの膨大な長さのフィルムが存在していて、それをMGM社長とプロデューサーに廃棄されたということです。


01.『ソドムの市』 Salò o le 120 giornate di Sodoma (1975 伊) ピエル・パオロ・パゾリーニ

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私がすごい!と思う映画(に限らず作品)は、世の中の既存の価値観や、自分の価値観を根底からひっくり返されるようなもので、フェリーニやパゾリーニの映画はその代表格です。
『ソドムの市』はその最たるところにあって、しばしば私に脅威を与えます。
人間の美徳とは正反対の、悪魔的な蛮行・背徳・涜神行為が、非常に美しく優雅に描かれることに驚かされると同時に、ここでは美醜さえもが反転します。
人間のこころの中にある、ひどくおそろしいもの(そしてそれは、私やあなたの中にもあるのです)を抉り出す、真におそろしい、また明晰な映画です。

※ショッキングなシーンがたくさんあるので、鑑賞には注意が必要です。

 



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